絵や音楽から生まれる、森本千絵さんの仕事
KIRIN「8月のキリン」、「一番搾り」、「一番搾り 若葉香るホップ」のパッケージデザイン。
そして2018年4月2日から放送開始のNHK 連続テレビ小説「半分、青い。」メインビジュアルのアートディレクション。
そのほかにもミュージシャンのアートワーク、書籍の装丁、映画・舞台美術、動物園や保育園などソーシャルな場の空間ディレクションまで、活動は多岐に渡る。
プロジェクトを進めるにあたって、制作に関わる人々と絵や音楽を用いてコミュニケーションをとるのが森本さんのスタイルだ。
解決したい課題がどこにあるのか・どこに向かいたいのかを考えながらアイデアを絵に込める。時にはイメージに合う音楽のCDをクリエイターに渡し、一緒に制作を進めていく。
最近の彼女のTwitter投稿からも、制作現場に絵を持参し、完成イメージを密に共有しながら撮影に臨む様子を見ることができる。
太陽を掴むスズメ。
屈託のない笑顔で飛び放つ小鳥かのように撮影させていただきました。半分の青は、心の中の晴れた想像力なのではと感じてます。撮影中に一緒に青を描きました。これからはじまる物語と共に、この晴れポスターを届けたく思います。朝ドラのポスターに関われ心から感謝しています。 pic.twitter.com/D22v4j2YlE— 森本千絵 (@morimotochie) 2018年3月9日
2トントラックとラブ&パンク
見たことのない世界なのになぜか懐かしい。
人工物であるのにもかかわらず、「体温」や「命そのもの」を感じる。
なぜ、私たちは彼女の手がけたプロジェクトに心を動かされるのだろう。
様々なメディアの記事や森本さんの著書に触れる中で、その理由はきっと「彼女の生き方そのものに生命力があるからだ」と考えた。
これまで歩んできた道を振り返っていただき、彼女の生き方や考え方についてより深く知るべく、彼女のオフィスを訪れた。
インタビューの最中はなんだかまるで映画を見ているようだった。一気に「森本千絵ワールド」に引き込まれ、終わった後もなかなか興奮さめやらない。
とりわけ学生時代のお話は、え? と驚くようなことばかり。「それ本当ですか?」と何度も聞き返したくなった。
例えば、学生時代には夢を叶えるために圧倒的な「量稽古」を続けていたこと。
中学生の頃から広告デザインの道に進むと心に決め、念願の美大に入学してからは、課題も含め、他の学生の5倍以上は作品を生み出し続けたという。
就職活動では2トントラックでないと面接会場に作品を運びきれなかったというエピソードが印象的だ。
これだけ聞くとなんだか真似できないなぁと感じてしまうものだが、打ち込んでいたのは作品づくりだけではない。
仲間たちと「とことん遊んだ」という森本さん。友人たちとのエピソードを聞くと一気に親近感が湧いた。
素晴らしい仲間たちがいたからこそ、今の自分がいる。学生時代をひたすら濃く、アグレッシブに過ごしたことでアイディアの引き出しも増え続けた。
当時の私たちは、世界を変えられると本気で考えている馬鹿というか、みんなと一緒に色んなことに憧れて、色んなことに文句言いながら、ラブ&パンクみたいな感じで過ごしていましたね。 でも、今があるのは、その時の友達のおかげだと思います。(本編より)
独立のきっかけ、goen°(ゴエン)という名前の由来……。
本編開始を乞うご期待!
大学卒業後、強烈な個性の先輩に揉まれながら博報堂時代を過ごし、独立した森本さん。
ずっと心に響いていた「ご縁」という言葉を社名にし「出逢いを発明する。夢をカタチにし、人をつなげていく。」というコンセプトを掲げた。
広告を見るか見ないかによって、その人の行動が変わる。つまり広告は縁を作っているのだと、おばあさんに教えていただき、すごく幸せなことだなあと、改めて実感しました。 これは本当に素敵な出会いだったと感じています。そのエピソードと、HOMEの仕事、おばあちゃんの死が独立への大きなきっかけでした。(本編より)
次回より3回に渡ってインタビューをお届けする。
彼女の熱量を伝えることによって、この記事自体が皆さんの心をどんな風に動かせるか、今から楽しみだ。悔しいと思うのか、横に並びたいと思うのか。特に学生さんや若手クリエイターにとっては必読の内容。お楽しみに!
※『【連載】心を動かすgoen°のデザイン vol.1』は、は3月30日(金)更新予定です。