(前回の記事)【Sneak preview】 グッドパッチが挑む、デザインの社会的価値の向上
「世界が変わる」と感じた瞬間
土屋:はい。最初にデザインを意識しだしたのは間違いなくiPhone3G発表のときですかね。もっと前までいくと、多分……大学に入るときに自分で初めて買ったパソコンが、ソニーのVAIO。当時のVAIOだと珍しいデザインだったんですよ。
「デザインが面白いパソコン」がもともと好きでした。でも、その頃はMacを買うというところまでいかなくて。当時は触る機会もあまりなかったので。
はい。もちろんiMacのCMなどは見ていましたし、欲しいとも思っていましたけど、いろんなハードルを乗り越えて買うところまではいかなくて。iPodは持っていましたけども、「いけてるな」っていうぐらいの感じ、それで止まってたんです。だけど、iPhoneが出たときは、明確に違いました。
「ああこれは、世界が変わる」って。
スティーブ・ジョブズのプレゼンが有名ですが、実はあれは後で知ったんです。僕が初めてiPhoneを知ったきっかけは本なんですよ。本田直之さんの『レバレッジシンキング』か、もしくは『レバレッジリーディング』か、レバレッジシリーズの中の一節にiPhoneを使うくだりが出てきていて。当時日本では発売されていなかったんですが、アメリカにはiPhoneというものがあってそれを使ってスケジュール管理などをやっている、と本田さんが書いてて。
そう、2007年。ちょうど10年前ですけど。それを見て、もう、「すごい!」って感動しちゃって。僕は20代前半で「20代のうちに起業する」と決めていました。そのきっかけとして孫正義さんの影響を受けた部分があって、孫さんが大好きだったんです。本当に忘れもしないんですけども、2008年にiPhone3Gがソフトバンクから発売決定っていうのがYahoo!のトップに出たときに、ガッツポーズしましたね。
どことなくガレージを連想させるエントランスを抜けると、キッチン付きのコミュニケーションスペースが拡がる。
当時働いてたオフィスでそのニュースを見て「よっしゃ」って叫んだのを覚えています。そうやって出会ったiPhoneが、全ての始まりですね。
説明書がなくても直感的で全てが分かるというか……。インターフェースですね、やはり。
これが今UIの仕事をやっているということにもつながっていますが、思えば当時から僕はユーザーインターフェースが大好きだったんです。
日本でも、いわゆる「ガラケーの時代」に全画面がタッチパネルの携帯電話というのはありましたがそういうのは流行りませんでしたよね。自分自身も持ちたいとは全く思いませんでした。でもiPhoneが出てきたときに、何ですかね、本当に言語化できないですけど、もうこれは確実に世界が変わると直感的に思いました。
だけど、日本の結構多くの人たちの専門家の意見は真逆だったんです。発売開始当初は9割以上の専門家が「iPhoneは流行らない」と言っていたんですよ。
そう。日本のガラケーよりスペックは低いわ、機能はないわで、総たたきみたいになって。当時、買ったばかりのiPhone3Gを会社に持って行ったら、すごくばかにされましたね(笑)。
でも、その2年後にはほぼ全員が持つようになった。