【連載】社会を変えるNOSIGNERのデザインvol.1 デザインを暗黙知から形式知へ

Jun 09,2017interview

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Jun09,2017

interview

【連載】社会を変えるNOSIGNERのデザイン vol.1 デザインを暗黙知から形式知へ

文:
TD編集部

プロダクトデザイン、グラフィックデザイン、空間設計、インスタレーション……。幅広い分野で「ソーシャルイノベーションのためのデザインファーム」を掲げ、縦横無尽に活躍するNOSIGNER、太刀川瑛弼(たちかわ・えいすけ)さん。実は、大のクルマ好きでもあります。
全3回の連載、1回目となる今回は「デザインを形式知に落とし込む」というテーマで話を伺いました。「センス」や「才能」といった「暗黙知」の文脈で扱われがちなデザインですが、「適切に説明できるというのはすごく大事なこと」だと太刀川さんは語っています。ご本人のデザイナーとしての原点から、現代における「デザインの回帰運動」のお話まで深く濃く、お話しいただきました。

暗黙知の領域だと思われがちなデザインを「形式知」にする

数々の印象的なプロジェクトにかかわっていらっしゃる太刀川さん。ご自分の言葉をひとつひとつ定義して、デザインを意識的に言葉にされているという印象があります。著書(『デザインと革新』 バイ インターナショナル刊)の中でも、たびたびデザイン用語を言葉で定義しています。意識的にそうされているんでしょうか。

太刀川:デザイナーというのは、すごく抽象的なものを扱うのが仕事です。ある種、言葉にならないものを扱います。 その場の空気や雰囲気、状況、関係性といった見えない部分、構造が浮き彫りになりにくい部分を感性的に扱うのがデザイナーという仕事です。
だから、デザインの良し悪しは感覚の問題と捉えられがちなんです。才能のある人だけがいいデザインができて、自分には才能が無いからできない、とか。でも僕にしてみると、これは極めて残念な誤解なんです。
というのも、僕自身もやっぱり最初はデザインが分からなかったので。

太刀川氏の著書『デザインと革新-未来をつくる50の思考』
デザインの本かと思いきや、内容は仕事術から縁の育て方まで多岐にわたる
そうなんですか。

僕は、基本的にデザインを独学してきた人間で、建築のデザインは大学院まで学びましたが、グラフィックやプロダクトに関しては完全に独学だったんです。そうすると自分で自分を教育するわけですが、そのとき何がよくて何がよくないかの構造が分からないと何から自分に教えればいいか分からない。

感性として扱われがちな抽象的で目に見えない暗黙知を、形式知にしなきゃいけないという自覚があって。そこで、大学院の卒業論文を「デザインを言語学と捉えて分析する」というテーマで書いたんです。優れたデザインの背景にはどういう文法が流れているのか、といったことを無理やりテーマにしたわけです。

大学院は建築家の隈研吾さんの研究室にいらっしゃったとか。

はい。はじめは建築を志していましたが、在学中からデザインの方に興味が出てきて。隅さんに「すみませんが、僕はデザインの研究がしたいので、卒論はこういうテーマでやっていいですか」と相談しまして。隅さんには「すごくいいテーマだと思うけど、結論はぼかせよ」と言われました。まだ経験も少ない学生がこんな大きなテーマに結論を出すもんじゃないよ、と。いいアドバイスだと思いました(笑)。

卒論の内容はすごくざっくりいうと、言語とデザインがどう似ているのかを言語学的アプローチから探ってみようという内容です。例えば、類推はデザインでは使えるか、たとえ話や誇張は使えるか、と調べていくと、実際使えるんですよ。この経験を経て、言語が形成されていくところとアイデアが形成されていくところは、極めて隣接していると確信しました。

太刀川氏による論文(実物)。「デザイン」という暗黙知を形式知としてとらえ始めたきっかけともいえる

今、よく言われている「デザイン思考」が解き明かしたいことって、まさにこれなのかなと僕は思います。紺野登さんというデザイン思考の第一人者がいらっしゃいますが、彼はこのデザインの文法という考え方を「デザイン思考の真髄だね」と言ってくれまして。実は今、一緒に本をつくっています。

共感が世の中をドライブする時代。意識を向けるべきは「他力」

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