オープンにすることで世の中に揺さぶりをかける
太刀川さんが手がけた作品を見てみると、全体的に何でも「オープンにしよう」という意志が伝わってくるのですが、どういった意図があるのでしょうか。
太刀川:そうですね。そこには、オープンにすることでムーブメントを起こして世の中を揺さぶりたいという気持ちもあります。どういうインパクトがあるのかを試したい。例えばMozillaのオフィスをオープンソースにしましたが、それだけでオフィスデザインという概念が変わるなんて思ってはいません。でも、そういう事例が生まれたということに意味があるんだと思います。オープンソースのオフィスデザインがあるという前提において、インテリアデザインをインテリアデザイナーがどう相対化するのかに意味があるし、思想的に引き継いでくれるデザイナーが現れると思っています。
オープンソースの理念に基づき、すべての図面・制作手順を公開。
主に一般に流通している素材を用いて設計されているので、誰でも安価に機能的なオフィスを構築できる
こういうデザインを出すこと自体が、世の中に問いを投げかけることになる。僕はプロジェクトを通じて世の中に問いを投げたいんです。マッサージみたいなもので、硬くなっているところを刺激して、揺さぶって、流れが良くなればいいな、と。それが世の中に波及するかは分からないけど、それでもドアをノックしてみる。僕はたぶん、そういうことしかできないので。
でももう10年以上やってますからね。最初の3年くらいは確かにそうなんですが、だんだん「その投げっぷりがいいんじゃないか」みたいな追い風も出てくるんですね(笑)。僕よりももっとドラスティックなことをやる人が出てきたり。
僕が投げた石が影響しているのかは分からないですし、自分の影響だなんて思わないです。でも同じように石を投げる人がたくさんいて、一緒に同じ方向に向かっていくムーブメントを作っているんだと信じてやっています。