芸術の秋、アートフェア・芸術祭に参加してみようTD編集部のエディターズノート

NEW Sep 20,2024note

#Art_fair

NEW Sep20,2024

note

芸術の秋、アートフェア・芸術祭に参加してみよう TD編集部のエディターズノート

文:
TD編集部 青柳 真紗美

アートと出会う場は美術館だけではない。アートフェアや芸術祭は、近距離旅行や外歩きが楽しい季節にもってこいのお出かけスポットだ。日本でも今年、こうしたアートフェアや芸術祭が本格的に活気を取り戻している。これらについて紹介するとともに、紅葉シーズンを前に、2024年秋冬の開催情報も編集部・青柳が独自の視点でまとめた。

そもそもアートフェアや芸術祭って、何をするところ?

アートフェアとは、画廊やギャラリーが多数集まって開く展示即売会のことだ。広い会場がブースごとに分かれ、各画廊が「推し」の作品を多数持ち寄る。来場者と直接商談が行われ、その場で、あるいは会期終了後に作品はコレクターの元に届けられる。

アートフェアは販売イベントであると同時に、アーティストたちにとってのデビューの場、あるいは新作発表の場としても注目される。特に有名キュレーター(展覧会の企画を行う人)の目に留まれば、その後のキャリアに大きな影響を与えることもあるというわけだ。
例えば、スイスのバーゼルという小さな町で毎年開催される「アート・バーゼル」は世界的に有名なアートフェアで、アートを購入したい一般客はもちろんのこと、世界中の美術館のキュレーターや企画担当者が訪れる。他にも、シンガポールのART SGや中東のアート・ドバイといった新興のフェアも盛り上がりを見せている。これらのフェアは、世界中のアート業界関係者やコレクターが集まる機会であり、フェアの期間中、訪れた人々に向けたミートアップやアートイベントも多数開催される。

アート・バーゼル2024の様子
Courtesy Art Basel

一方、芸術祭はアートフェアとは異なり、地域密着型でより広く一般に開かれているイベントだ。会期や目的はさまざまだが、海外では「アートウィーク」と呼ばれることも多く、行政が後援に入ることもしばしば。地域の美術館、大学、アーティストなどが協力し、複数の場所で展覧会やワークショップ、イベントが行われ、アーティストによるトークイベントに参加したり、在廊中に直接作品について語ってもらうこともできるだろう。TDでは以前「釜山ビエンナーレ」を取材し、地域コミュニティとアートの繋がりや、アーティストの持つルーツと彼らが挑戦する独自の表現について考えた。
参考:『釜山ビエンナーレ2022から考える「芸術祭のいま」』

日本国内に焦点を絞ると、芸術祭の歴史はまだ浅く、2000年の「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」や2001年の「横浜トリエンナーレ」がきっかけだと言われている。国際的に日本の芸術祭の存在感を一気に押し上げたのが2010年に開始された「瀬戸内国際芸術祭」だ。草間彌生氏の作品とともにインターネット上で話題を呼び、現在では海外観光客を引き寄せる観光資源の一つとなっている。
地域芸術祭は、その地域や都市の魅力を再発見できる展示構成にユニークさがあり、豊かな自然や地域の生活の中でアートと触れ合う体験は新たな感覚を呼び起こす。自分にゆかりのある土地での開催時にはもちろんのこと、旅先でふらりと参加するのも楽しいだろう。住民やサポーターによる運営は、地元の祭のような高揚感も感じさせてくれる。その時・その空間にしか生み出せないアートと人、そして場の化学反応が、訪れた人に独特の非日常感を与えるのだと思う。

『南瓜』(草間彌生, 2022年復元制作)
プレスリリースより引用

筆者流、アートフェア・芸術祭の楽しみ方

アートの楽しみ方に決まりはないが、初めての人にとっては敷居が高く感じられるかもしれない。ここでは、筆者なりの楽しみ方をいくつか紹介しよう。

まず、アートフェアに行く際には、できれば事前にプレスリリースなどを読んで、出展者について簡単に調べておこう。ノールックで飛び込むのも一つの楽しみ方だが、興味を持てそうなギャラリーやアーティストにあたりをつけておくことで、より充実した体験ができると思う。もちろん、作品との偶然の出会いを楽しむのも楽しいが、美術館と比べて必ずしもベストな展示会場だとは言えない。各ブースは狭く、壁も画一化されていて、照明や壁、鑑賞距離などが工夫できないことも多いからだ。また、美術館にあるような「解説」のような参考資料も基本的にはないと思っておこう。
現地で気になる作品を見つけたら、積極的にギャラリーの担当者に話しかけてみると良い。アーティストの背景や作品で使用している画材、作品が制作された時期など、何を聞いても構わない。購入の意図がなくても、純粋な感想を伝えるだけで喜ばれる。担当者がその感想をアーティストに伝えることができるからだ。気になったアーティストがいれば、名前をメモしておき、あとでゆっくり、ウェブサイトやインスタグラムなどのソーシャルメディアでチェックしてみるのも楽しいだろう。

芸術祭でも、情報を集めておくことをおすすめする。事前知識がないと、コンテンツの多さに圧倒され、何を見れば良いか分からなくなることがある。また、複数の美術館をお得に鑑賞できる「フリーパス」が用意されていることも多い。主催側が推奨する順路や巡回バス、イベントの時間などをあらかじめ把握し、チケットや事前予約が必要なものは手配しておこう。
現地ではスタッフとコミュニケーションを取ってみよう。よくわからなければ、受付スタッフやガイドスタッフに「おすすめの作品(展示)はどれですか?」と尋ねてみてもいいだろう。
もしリクエストがあれば ー 子どもたちにもアートに触れてほしい、珍しいものが見たい、景色の綺麗な場所がいい、素敵な写真が撮れるスポットを知りたい、など ー それらも臆せず聞いてみよう。
地元の人やボランティアスタッフが中心となって対応していることもあり、意外な答えが返ってくるかもしれない。そうしたやりとりも、思い出の一つになるだろう。

2024年秋冬注目のアートフェア・芸術祭

あなたも少し興味が湧いてきただろうか。それでは、今年の秋冬に開催されるアートフェアや芸術祭をまとめてみよう。足を運んだことがある人もそうでない人も、非日常の刺激を受けられるだろう。

アートフェア
ART FAIR ASIA FUKUOKA 2024
会期: 9月20日(金)~ 22日(日)
会場:福岡国際センター(福岡県福岡市博多区築港本町2-2)

Art Fair Beppu
会期:9⽉21⽇(⼟) 〜 24⽇(⽕)
会場:別府国際観光港 旧フェリーさんふらわあ乗り場 (大分県別府市汐見町 9-1)、BEPPU STUDIO 01 (大分県別府市楠町14-2 財前ビル1階)、清島アパート (大分県別府市末広町2-27)

Art Collaboration Kyoto
会期:10月31日(木)〜 11月3日(日)(31日はプレビュー)
会場:国立京都国際会館(京都府京都市左京区宝ヶ池)ほか

TOKYO ART BOOK FAIR 2024
会期:11月28日(木)~ 12月1日(日)
会場:東京都現代美術館(東京都江東区三好4-1-1)

KOGEI Art Fair Kanazawa 2024
会期: 11月29日(金)〜 12月1日(日)(29日はプレビュー)
会場:ハイアットセントリック金沢 2、5、6F(石川県金沢市広岡1-5-2)

UNKNOWN ASIA 2024
会期:12月6日(金)〜 8日(日)(6日はプレビュー)
場所:梅田サウスホール(大阪府大阪市北区梅田1-13-1 大阪梅田ツインタワーズ・サウス 11F

アートウィーク・芸術祭
大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2024
会期:7月13日(土)〜 11月10日(日)
会場:新潟県・越後妻有地域(十日町、川西、中里、松代、松之山、津南の6エリア)

さどの島銀河芸術祭
会期:8月11日(日)〜 11月10日(日)(6日はプレビュー)
会場:新潟県佐渡市の佐渡島内各所(両津エリアが中心)

神戸六甲ミーツ・アート
会期:8月24日(土)~ 11月24日(日)
会場:ROKKO森の音ミュージアム(神戸市灘区六甲山町北六甲4512‐145)ほか全9会場

三陸国際芸術祭 2024『訪レ(おとずれ)』
会期:2024年9月~2025年3月(予定)
会場:東北地方三陸沿岸地域

みちのおくの芸術祭 山形ビエンナーレ2024
会期:9月1日(日)〜 16日(月・祝)
会場:蔵王温泉(山形県山形市)、東北芸術工科大学(山形県山形市上桜田3-4-5)

飛生芸術祭
会期:9月7日(土)〜 9月15日(日)
会場:飛生アートコミュニティー(北海道白老郡白老町竹浦520)

北アルプス国際芸術祭2024
会期:9月13日(金)〜 11月4日(月・祝)
会場:長野県大町市内の5エリア

GO FOR KOGEI 2024
会期:9月14日(土)〜 10月20日(日)
会場:富山県富山市(岩瀬エリア)、石川県金沢市(東山エリア)

東京芸術祭
会期:9月15日(日)〜29日(日)
会場:東京芸術劇場、GLOBAL RING THEATRE〈池袋西口公園野外劇場〉

六本木アートナイト
会期:9月27日(金)~29日(日)
会場:六本木ヒルズ、森美術館、東京ミッドタウン、サントリー美術館、21_21 DESIGN SIGHT、国立新美術館、 六本木商店街、その他六本木地区の協力施設や公共スペース

森の芸術祭 晴れの国・岡山
会期:9月28日(土)〜 11月24日(日)
会場:岡山県内の12市町村(津山市、高梁市、新見市、真庭市、美作市、新庄村、鏡野町、勝央町、奈義町、⻄粟倉村、久米南町、美咲町)

MEET YOUR ART FESTIVAL 2024「NEW ERA」
会期:10月11日(金)〜 14日(月・祝)(11日はOUTSIDE MARKET・ライブパフォーマンス/DJエリアのみ)
会場:寺田倉庫G1ビルほか東京・天王洲運河一帯

アートウィーク東京
会期: 11月7日(木)~ 10日(日)
会場:東京国⽴近代美術館、東京都現代美術館、森美術館など東京都内の美術館とギャラリー約50カ所

 

この記事を読んだ方にオススメ