東京モーターショーに工房出現?!学生たちが制作する1/5クレイモデル

Dec 27,2017report

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Dec27,2017

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東京モーターショーに工房出現?! 学生たちが制作する1/5クレイモデル

文:
TD編集部

東京モーターショーの一角に、黙々と粘土の塊を削り続ける若者たちがいたことに気づいた方はいるだろうか。TDが今年手がけてきた「ウェブを超えたリアルな場でのデザイナー支援」、その取り組みの一つである「Clay modeling workshop for student」というワークショップだ。まるでどこかの工房のような雰囲気に思わず足を止めて見入る人も! 先週に引き続き、2017年の振り返りとしてその模様をレポートしよう。

ウェブを超えたリアルな場でのデザイナー支援

2017年10月25日(水)、東京モーターショーのプレスデー。各所で開かれる報道陣向けの華やかなプレスイベントには目もくれず、黙々とインダストリアルクレイを削る若者たちがいた。彼らはカーデザインを学ぶ学生たち。3チームに分かれ、自分たちでデザインしたクルマのスケッチを元に、クレイモデルを作っている。そんな学生たちを、自動車メーカー各社の第一線で活躍していたベテランモデラーたちが見守る光景は、モーターショー会場の中で独特の気迫を放っていた。

これはTDが主催した、カーモデルに興味のある学生(高校生、専門学校生、大学生)を対象としたクレイモデル制作の体験講座の様子だ。「ウェブを超えたリアルな場でのデザイナー支援」の取り組みの一つとして行った。
インダストリアルクレイとは、実際のカーデザイン開発の現場で使用されている造形材料のこと。自動車メーカー各社のクレイモデラーで構成される「日本カーモデラー協会(JCMA)」と、そのOB団体「日本産業モデル造形振興会」のメンバーを講師として招集し、プロのカーモデラーとともに1/5スケールモデル制作を行った。

デザイナーはわかる。でも、「モデラー」って?

モデラーという職種を知っているだろうか。カーデザイナーと比べて一般にはあまりなじみがないかもしれないが、その役割は、一言で表すなら「デザイナーが描いた二次元のスケッチをもとに二人三脚で立体を作り上げる」というもの。
デザイナーのスケッチに込められた意図や想いを汲み取り、タイヤの位置や室内空間の広さといった現実的なパッケージとすり合わせながらリアルな造形として仕上げていく。デザイナーが描いた世界観やイメージをどれだけ実車に反映できるか、そしてそれらのデザインをより魅力的に立体に起こせるかがモデラーの腕の見せ所だ。

クレイモデルを作るには、立体構築力、(三次元の)表現力、構造把握力といったデザインの基礎が非常に重要だ。従ってモデラー志望だけでなく、カーデザインに関わるすべての職種を目指す学生たちにとって、実際に手を動かしてクレイモデルを作ることは、いい訓練になる。

思いを込めたデザインを「モノ」として仕上げる

TDでは以前「インダストリアルクレイ」を扱う株式会社トゥールズインターナショナル主催の「クレイモデル講習会」を取材した経緯から、東京モーターショーに合わせて今回のワークショップの開催を企画した。今回、プレスデーでのワークショップに挑戦したのは武蔵野美術大学工芸工業デザイン学科、稲田真一研究室に所属する学生たち。3チームに別れ、持参したスケッチを見ながらクレイモデルを作り上げていく。

まずは「中子(なかご)」と呼ばれる芯材の周りに温めたクレイを盛り付ける。これを粗盛りと呼ぶ。クレイは加温すると柔らかくなり、冷めると硬化して削れるようになる。そのクレイをナイフやヘラなど、さまざまな器具を使って削り、意図する「面」を作り出していくのである。学生たちはプロのモデラーから直接指導を受けながら、3日がかりでクレイモデルを仕上げていった。

プロのモデラーは工具を全て自前で作る。工具の型自体が企業秘密だという話に驚き!
最初は指示されるままに削るだけだった学生たちも、3日目にはしっかり勘所を抑えていた

クレイモデルの制作には繊細な造形感覚が求められる。元日産のデザイン本部でモデラーとして活躍した齋藤仲夫氏は「ただ面と面を合わせるだけではそっくり返って見えてしまう」「エッジに向けて滑らかに曲率を変化させることで、面と面のつながりが良くなる」と解説。過去の名車の断面図を見て微妙な局面の変化を研究したこともあるそうだ。

クレイを削り終えると、最後にウインドウに黒いフィルムを貼って完成。実際のデザインの現場では、クレイモデル全体にボディカラーに合わせたフィルムを貼り付けることもあるが、今回は時間の関係でウインドウまで。3台の個性的なスポーツカーが完成した。

頭の中で描いたイメージを実際に「モノ」として仕上げるクレイモデル制作。プロからフィードバックを受けながら手を動かして制作する経験を通じ、学生たちは大きな収穫を得たのではないだろうか。このワークショップはプレスデー終了後もモーターショー期間中の平日に実施され、のべ30名以上の学生が参加した。中にはカースケッチを描いて持参してくれた学生もおり、編集部としても嬉しい企画となった。来年は日本でのモーターショーは開催されないが、こうした取り組みは今後も続けていきたい。

読者プレゼントのお知らせ

「Clay Modeling Workshop for Students」の開催を記念し、東京モーターショープレス限定トートバッグ(非売品)と、ワークショップTシャツ(Lサイズ)をセットで3名様にプレゼント。

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