【前回までの記事】
vol.1 感情に影響を与え、生活を変化させるもの
vol.2 スズキ・日産の自動車CMFセミナー
公開プレゼンテーションを総振り返り
2019年12月18日・19日の2日間に渡って開催された「オートカラーアウォード(ACA)2019」。本年度で22回目を迎える本イベントは、会場を前回までの横浜美術館から東京国際交流館プラザ平成(江東区)へ移し、10メーカーから12のカラーデザイン(19台)がエントリーした。
1日目のメーカー担当デザイナーによる公開プレゼンテーションは、1車種につき10分間。各デザイナーは趣向を凝らした演出によって自らの仕事をアピールし、このイベントの大きな見所となっている。
当日は自動車愛好家やモビリティ・デザイン関係者たちに加え、デザインやアートを学ぶ学生たちも多数来場していたのが印象的だった。プレゼンテーションが始まるまでの間、屋外に展示されたノミネート車を一台一台見つめたり、写真を撮ったり、実際に座席に乗り込んでみたり。互いに感想を言い合う姿に感化されたメーカー関係者も多かったのではないだろうか。
CMFデザイナーたちの活躍やこだわりは、日頃、取り上げられる機会が少ない。だからこそTDでは、今回ノミネートされた全ての車輌のプレゼンテーションを紹介していきたい。ということで、 各社の発表概要を発表順に紹介しよう。
<ノミネート車(プレゼンテーション順)>
No.1 本田技術研究所 FREED(CROSSTARグレード)
No.2 ヤマハ発動機株式会社 NIKEN GT / NIKEN
No.3 トヨタ自動車株式会社 GR SUPRA / RAV4
No.4 ダイハツ工業株式会社 Rocky
No.5 スズキ株式会社(四輪) クロスビー
No.6 マツダ株式会社 MAZDA 3 Fastback / MAZDA CX-30
No.7 川崎重工業株式会社 W800 STREET / W800 CAFE
No.8 スズキ株式会社(二輪) KATANA
No.9 株式会社SUBARU WRX STI EJ20 Final Edition / SUBARU BRZ
No.10 三菱自動車工業株式会社 eK X
No.11 日産自動車株式会社 DAYZ ハイウェイスター
No.1 本田技術研究所
FREED(CROSSTARグレード)
テーマ「家族が主役のクロスオーバースタイルミニバンCMF」
子供の気持ちに寄り添って開発した優しいブルー
FREEDのメインユーザーは、共働きの子育てファミリー。CROSSTARは、ユーザーへのリサーチで得られた「近所や街乗りにはちょうどいいが、アウトドアには少々躊躇される」という声により開発された新シリーズだ。
当時、社内の子育てママチームによる社内コンペに取り組んでいた三輪氏は、従来のママ目線から子供目線に変えることで、シーンではなく子供の気持ちに沿った発想ができるのではないかと考えた。
子供ならではの振れ幅の広い気持ちに対応するには、原色ではなく、空や海など優しい自然の色が相応しいと、ボディ色「シーグラスブルー・パール」を開発。単色では寂しいので、見る角度によって色の表情を変える調合を試行したことで、街中でも風景に溶け込む絶妙なカラーとなった。
インテリアでは、子供目線の秘密基地と両親のためのお洒落な空間の両立を標榜。内装は基地の穴蔵や隠れんぼ遊びのイメージを表現し、シート表皮は汚れが目立たない効果を持たせた。同時に、インパネに積層木目という大人びた素材を用い、木目の水平基調がママの運転に安心感を与える効果をもたらしたという。
No.2 ヤマハ発動機株式会社
NIKEN GT / NIKEN
テーマ「NIKEN−差別化価値を視覚化するCMFGのチカラ」
(右上:マットダークパープリッシュブルーメタリック1(マットブルー)/右下:ダークグレーメタリックG(ダークグレー))
「CMFG」で表現した性能へのこだわり
ヤマハからはCMFに「グラフィック(G)」を加えた「CMFG」という思想により、同社独自のLMW技術を用いた「NIKEN」がエントリー。差異的価値を視覚化する(平たく言えば、他社のバイクとの違いを視覚的にも表現する)方法を模索した。また、本来はフィニッシュ(仕上げ)を指すFにファンクションの意味も込めたことで、グラフィックとファンクションを融合する新たな価値観を生み出した。
ヤマハのレースへの情熱や性能をアピールする色、「マットダークパープリッシュブルーメタリック1」をホイールなどに用いることでアクセントとし、ボディのグレーはそのブルーを引き立たせる色合いとした。また、最大45度まで傾けて走行できるNIKENの性能を生かし、ラジエターホースカバーには車体が傾いた時にだけ見えるグラフィックを施した。
一方、四輪と異なり機能部品自体が見せ場になると考え、たとえば軽量化のために肉抜きをした素材には、より丈夫に見える表面処理を行ったとする。
No.3 トヨタ自動車株式会社
GR SUPRA
テーマ「「走る喜び」と「所有する喜び」を凝縮した“心踊る”カラ ーデザイン」
RAV4
テーマ「 CMFの力で冒険気分を掻き立てろ!」
(右上:GR SUPRA / 右下 :RAV4)
名車を手がける重圧と、CMFでユーザーの挑戦を後押しする心意気
トヨタからはBMWとの協業が話題の「GR SUPRA」と売れ筋SUVの「RAV4」の2台がノミネート。SUPRAのエクステリアのカラーは、「マットストームグレーメタリック」。走れば嵐のような激しさを、ガレージでは戦闘機のような佇まいを見せ、走りと所有の両方を満足させることを表現した。
開発はドイツで行われ、デザイナー自らがF1やWRCなどレースカーの歴史に触れる中で「クルマの性能の高さを示すCMF」を目指した。金属らしい強い陰影を持ちつつ、色相にほのかなブルーを加えることでより影を強く、鮮明に見せる。一般的にマットはフラットに見えてしまうため、実際にはマットと陰影の両立に苦心したという。
インテリアの「イグニッションレッド」は、ドライバーの本能に火をつける赤。内装の形状にもマッチさせた。
また、ニュルブルクリンクサーキットにおいて、デザイナー自らがドライバーの隣で体験走行。正確なドライビングをするために体幹のサポートが重要であることを知り、シートにはセンター部にグリップの強い素材を使った。一方で助手席にはブラックを用い、彩度、明度を落として内装全体での高い質感を意識。使用したカーボン加飾やステッチなどは、ドイツでこそ見つけることができた素材だという。
もう1台のRAV4のテーマは「CMFの力で冒険気分を掻き立てろ!」。
販売状況も好調で「アーバンカーキ」が38%、購入層は30代が40%と想定のユーザーに響いている。これはアウトドアウェアを都会で着るといった使い方の変化や、スーツを使わない仕事が増えるなどライフスタイルの変化が考えられる。
RAV4のインテリアには、自然でも都会にも映えるアーバンカーキに沿い、自然との関わりを持ちながら都会でも似合う「オーキッドブラウン」を開発。同系色のトーンに合わせることでリズム感を生んだ。また、側面のラバー素材や操作部位のギア感など、日常の景色をアドベンチャーの世界に変える演出にチャレンジした。
No.4 ダイハツ工業株式会社
Rocky
テーマ「新自由CMF」
ヘリテージカラーを現代に。色を見て全社が一つになった
ダイハツからは発表間もない新型「Rocky」がノミネート。開発テーマは「新自由CMF」と明快だ。今回、もっともダイハツらしく、しかもダイハツを越える色として「コンパーノレッド」を新開発した。
「コンパーノ」はダイハツが誇るヘリテージカーだ。1963年から69年にかけて販売され、小粋なイタリアンデザインとともに、神社の鳥居のような、オレンジにも朱色にも見える独特なカラーが多くのファンを喜ばせた。
これをヘリテージカラーとして2017年の東京モーターショー出品車「DNコンパーノ」でお披露目したところ、非常に好評でGOサインが出された。実際の量産化には相当な難しさがあったが、赤が朱色に変化する美しさに各部署が積極的に動いて実現したという。
2017年時点ではもう少しオレンジが強かったが、今回はSUVでの展開ということで若干赤に振っている。もともとは3層構造が目標だったところ、設備的な事情で2層でクリア。気楽に乗れるきれいな赤と、自分を解き放つ朱色の二つの魅力を出せた。販売直後では20%と高いシェアを誇っている。
No.5 スズキ株式会社 四輪
クロスビー
テーマ「EXPAND YOUR LIFE|ライフスタイルが広がるCMFデザイン」
(右上:ミネラルグレーメタリック3トーンコーディネイト / 右下:キャラバンアイボリーパールメタリック ブラック2トーンルーフ)
3トーンコーディネートが広げるカーデザインの新たな魅力
スズキの四輪からは、人気のコンパクトSUVであるクロスビーがノミネート。
発想のきっかけは「クルマに合わせて自分のライフスタイルを変えてもいいのでは?」というチーフエンジニアの言葉だった。 ルーフ、ボディとサイドドア下部に装着した「ドアスプラッシュガード」。この3つの面を使うことでまったく新しい世界観ができるのではと「3トーンコーディネイト」を開発。このアイディアは初期スケッチのドアガーニッシュを見ていて着想を得たという。
今回ノミネートされたうちのひとつ、「ミネラルグレーメタリック3トーンコーディネイト」では、通常はメインカラーにするイエローをガーニッシュの差し色とし、ボディ、ルーフはグレーとホワイトとした。差し色部分の広さは絶妙の調整を行い、一方でホイールはブラックとして黒子に徹した。
もうひとつの「キャラバンアイボリーパールメタリック ブラック2トーンルーフ」は、広大な砂漠を旅するアースカラーをイメージ。質感を上げるため白く輝く光輝材を少量使用し、ハイライトで一体感を得ている。2トーンにすることで頼もしさや重厚感を目指した。
また、3トーンをインテリアにも活用した「イエローカラーアクセント内装」を設定。インパネのカラーパネルで室内の広さを表現し、上下パイプフレームはギア感を演出。カラーパネルはツヤ感を上げ、シルバーはマットにしてコントラストを付けている。
No.6 マツダ株式会社
MAZDA 3 Fastback / MAZDA CX-30
テーマ「質感とコーディネーションの妙」
(右上:MAZDA3 Fastback / 右下:MAZDA CX-30)
「溶けた樹脂」「硬質な金属感」など、質感へのこだわりを徹底
30分間の休憩を経て、後半のプレゼンテーションへ。
マツダから、新世代商品の第2章となるMAZDA3 FastbackとMAZDA CX-30がノミネートした。プレゼン冒頭、「カラーも造形のひとつ」と明言しての発表となった。
新商品の特徴の一つであるボディのS字曲面を見つめながら閃いたのは「溶けた樹脂」。クールグレーを基本に独特のヌメリ感を与え、同時にダイナミックさを意識して、ハイライト部分に硬質な金属感を与えたのが新色「ポリメタルグレーメタリック」だった。
インテリアは、まずMAZDA3 Fastbackでは、商品コンセプトの「エキゾチックモダンスポーツ」に準じ、クールなモノトーンに艶のある赤を入れて刺激を感じさせるコントラストを狙った。ドアを開けると目に飛び込むバーガンディは、複雑な香りを持つブルゴーニュワインのような赤をイメージし、これをミドルエリアとシートにのみ使って、余計な部分には色を付けない潔さを打ち出した。
一方、30代の若いクリエイター夫婦をターゲットとしたMAZDA CX-30では、上質なネイビーブルーにグレージュという暖かみとヌケのある補色のカラーを組み合わせた。グレージュは彩度を上げ過ぎると古くさくなるため、意図的に下げることでモダンな表情に。さらに、インパネアッパーのステッチには明るいシルバーのステッチを施すことで存在を際立たせた。
No.7 川崎重工業株式会社
W800 STREET / W800 CAFE
テーマ「スタイルを高揚させる。」
(右上:W800 STREET / 右下:W800 CAFE)
ライダーが乗った姿が完成形! 「人中心」の表現を貫いた
ライディングスキルやスピードとは異なる価値観を求める層に向けて生み出された、カワサキのW800シリーズ。テーマは「スタイルを高揚させる。」だ。
「STREET」と「CAFE」という異なる仕様でまったく新しい層に届くWシリーズを開発した。クルマはそれ単体で走行時の姿が完成するが、バイクはライダーが乗った姿が完成形となる。この特徴を生かし、「人中心のデザイン」を心掛けた。
「STREET」は使うユーザーを目立たせるバイク。若者の嗜好として「ファッションは自分をさらけ出す表現の一部」として考えられる傾向が強い。独自調査ではスニーカーや小物などには派手な色を身につけるのに抵抗がない一方、長い期間に渡って使うものは地味な色を選択する傾向があるという気づきが得られた。また、「バイクはステータス」と考えるこの層に向け、ボディカラーはマットのブラック、アクセントに暗めのグレーを開発。大型バイクの所有感を満たすため、すべてをマットにするのではなく、要所にグロスのブラックを入れ、メッキの使い方にこだわった。タンクのグラフィックはストリートファッションから発想を得た。
一方、「CAFE」は使うユーザーによって見え方が変化するバイクだ。歴史的にカフェスタイルを嗜好したライダー達のプライド、即ち「人とは被りたくないスタイル」からタンクのグラフィックは高級ブティックをヒントにデザイン。派手さを抑えつつも、近くで見ると赤いフレームが輝くのが特徴だ。アクセントカラーは明るいシルバーで、シートはブーツやカバンから発想した赤味のあるレザーとした。デザインのバランスを微妙に崩すことで、メーカーとカスタムの間を狙った表現である。
No.8 スズキ株式会社 二輪
KATANA
テーマ「A Cut Above ひと目で『KATANA』とわかるデザイン」
(右上:グラススパークルブラック / 右下:ミスティックシルバーメタリック)
伝統を受け継ぎ、次世代を魅了するデザインを支えたCMF
熱狂的なファンを持つ同社の伝統的なモーターサイクル、「KATANA」の19年ぶりの復活。これに際してデザイングループが掲げたテーマが「A Cut Above『ひと目で「KATANA」とわかるデザイン』」だ。
1980年に登場、コンコルドを思わせる斬新さと未来感に溢れた初代KATANAに、Above、即ち「一段上、優れている」という価値を与えるための色として「ミスティックシルバーメタリック」を提示。文字通り日本刀の持つ鍛造の鋼感、妖艶さを表現するため、下塗りに高輝度メタリックアルミ、上塗りはコーティングパールの塗膜構成とした。これによりハイライトでは透明感、シェードでは金属質のカタマリ感を実現。朱の差し色により、銘刀の「KATANA」に生命を吹き込んだ。
もうひとつの「ガラススパークルブラック」は光沢のある黒、漆黒という日本的美意識を持ち込んだ。機能部品には黒を最小限に使用、艶消しとすることで車両全体を引き締め、シルバーとの対をなしている。また、シート表皮はしっとり落ち着いた光沢のシボ目を使い、3本のラインは滑り止めにも寄与しているという。
No.9 株式会社SUBARU
WRX STI EJ20 Final Edition / SUBARU BRZ
テーマ「SUBARU BLUE STRATEGY 【SPORTS BLUE】」
(右上:WRX STI EJ20 Final Edition / 右下:BRZ」)
「色は人を笑顔にする」。青へのこだわりがファンの共感を呼んだ
スバルのモータースポーツに採用する「WRブルー」の進化を打ち出す同社からは「WRX STI EJ20 Final Edition」と「SUBARU BRZ」の2台がノミネート。開発テーマもストレートに「SUBARU BLUE STRATEGY 【SPORTS BLUE】」とした。
歴代のWRブルーはスバルの技術を象徴する空や宇宙空間をイメージして開発された。洗練や上質、ワクワク感、スポーツの3つの要素を掲げ、14年もの間ブランドカラーとして人気色となった。
今回、そのモータースポーツ車両と同じ色を量産車に使うに当たり、さらなる進化のための3つの条件を掲げ、新色を開発。それぞれ「サーキットでスポンサーカラーに負けない青」、昨今のエコカーの淡いブルーなどトレンドの変化に対し「戦う青」、ニュルブルクリンク24時間やスーパーGTでの圧倒的な「存在感をユーザーに届ける青」とし、「WRブルー・パール」を開発。 具体的には、ブルーとパール顔料を主体にアルミフレークを微量に加えた。また3コートは重く見えてしまうことから2コート1ベークで実現しているのが特徴だ。
プレゼンテーションの中では、ファンミーティングでユーザーから寄せられた「SUBARUの青」に対する熱い想いが動画で強調されていたのが印象的だった。
No.10 三菱自動車工業株式会社
eK X
テーマ「MORE PLAYFUL, MORE ADVENTURE!」
ルーフ・ボディともに5色展開で、オーダーメイドのような嬉しさを
先代より日産自動車との合弁会社NMKVにて企画されていたeKシリーズの新グレード「eK X」がノミネート。三菱と日産、同型のクルマでそれぞれの特徴を追求し、異なるユーザー層にリーチできるように挑戦を重ねたという。
三菱の「サンドイエローメタリック/ホワイトソリッド(写真右上)」は、軽規格の中でも三菱の力強さを表現することを目標とし、イエローは雄大な砂漠をイメージして中明度・中彩度の黄色のトーンをあえて落とし程よい重さを目指した。ここはやり過ぎるとカーキやブラウンに近くなってしまい、足りないとクリアで軽い黄色になってしまう。結果、明快な2トーンのコントラストがキビキビとしたフットワークの軽さ、広い探求心を持つターゲット層を表現できたという。
もうひとつの「ナチュラルアイボリーメタリック/サンシャインオレンジメタリック(写真右下)」は、アウトドアや旅行をイメージ。アイボリーはあえてソリッドではなく細かなメタリックを加えて軽快感を出し、パッと目を引くオレンジをアクセントに加えた。5色展開だが、ルーフカラーも異例の5色設定としている。
インテリアの「ブラック&タン」では、シートを合皮とクロスのコンビネーションとし、クロスはアウトドアウェアのようにアクセントカラーを効かせたマルチストライプとした。また、インパネ中央のパッドにはアイボリーのパイピングを施すことで「ブラック&タン」の引き締め役とした。
No.11 日産自動車株式会社
DAYZ ハイウェイスター
テーマ「大人なDAYZの着こなしDAYS」
「本物感」を生み出すための表現
先の三菱との協業となる「DAYZ ハイウェイスター」がノミネート。
想定ターゲットとするワーキングマザーへのクルマとして、毎日がイキイキとする「プレミアムコンビネーションインテリア」を設定した。日々の運転ではインパネやコクピットこそが重要。ここに「本物感」を付与することでインテリア全体の質感が高くなると考え、ステアリングは本革、インパネからドアへのパートにはレザー調素材を用い、さらにインパネに軽では初のパイピングを施した。
当初、よりシャープだったインパネでは左右のベンチレーションも四角形のため、そのままではラッピングにシワやヨレができてしまう。そこで、スタイリングチームに相談して円形に変更、美しい表現が可能となった。
また、シートにしっかり感だけでなく柔らかさも持たせるため、トリコットを先染め糸で構成することで織物の表現を出した。基調色はブラウンで革らしさをストレートに表現し、アクセントとしてターコイズブルーという補色を使い、まるでプレゼントのリボンのような表現とした。センター部分のアームレストやシートベルトバックルはあえてブラックアウトさせ、ノイズを減らす工夫をしている。
一方、ボディ色の「ソーダブルー/アッシュブラウン2トーン」はママへのご褒美としてスイーツを想定、色はマカロンを使ってリサーチした。その結果、単なるパステルカラーではなく、やや低彩度が好まれ、補色による差し色も人気だった。
そこで、ボディの色の彩度もあげすぎないようにこだわった。ハイライトはソーダのようにすっきり「抜ける」質感を意識し、フロントフェイスからシェイドにかけてはブルーグリーンの色溜まりで立体感が出るよう調整。さらにルーフ、ミラーにはブラウンでスパイシーなアクセントを設けた。
今回の三菱との協業では6グレードのインテリア設定だが、これを2種類のベースクロスで実現している。そうした工夫を含め、同じボディでまったく異なる世界観を打ち出せたのはまさにCMFのパワーと感じたという。