イタリア・ミラノの街角で見かけた小さなクルマたち
ヨーロッパの街角で、オモチャのように小さくかわいい車を見かけることが増えてきた。たいてい二人乗りで、EV。くねくね曲がっている石畳の細い道をキビキビと走る。普通のクルマじゃとても停められないような、ちょっとした空きスペースに停まっているのを見るたびに、これは便利そうだなと思う。
こんなクルマが日本にもあれば、日常の足としてきっと便利なはずだ。日本には軽自動車という優れた小型車があるが、それでもまだまだ大きい。何しろ高速道路を100km/hで走れるだけのパワーと安全性能を備えているのだ。
小さいから威圧感も少ない
電動アシスト付き自転車じゃ物足りない。スクーターも一人乗りだ。でも軽自動車ほどじゃない。もっとゆっくりでいいから、もっと小さくて気軽に乗れる乗り物があればいいのに。そう思って調べてみると日本にも小さなクルマは結構あった。配達のほか、地方自治体が観光客向けに導入したり、カーシェアにも使われている。
実は国土交通省は、軽自動車よりも小さく手軽なクルマを「超小型モビリティ」と呼び、新たなカテゴリーとして導入を検討している。近所まで買いものに行く、子どもを送り迎えする、病院へ送迎するといった近場の移動を想定し、各地で実証実験を重ねているが、まだ法整備は整っていない。
そのため、多くがナンバープレートが水色の「ミニカー」として登録されている。その場合、二人乗りが可能な規格であっても一人でしか乗ることができない。
代表的なのはトヨタ車体が手がける「coms(コムス)」。セブンイレブンの配達に使われているから見かけたことがあるかもしれない。コムスは幅1.1mほどの一人乗りEVで、家庭用コンセントでも充電できる。ドアはついていないが、オプションでキャンバスドアを装着できる。
ホンダは「MC-β(エムシーベータ)」という小型EVを作り、熊本県やさいたま市、宮古市などで実証実験を実施している。大人2人が乗車してもゆったりした空間を実現するため、リアシートをオフセットに配置したりと快適性へのこだわりが光る。キリっとしたフロントマスクがなかなかカッコいい。
こちらは日産の「ニューモビリティコンセプト」。ルノーがヨーロッパで販売している「Twizy」の日産バージョンだ。Twizyは、ルノー・スポールF1と組んでスポーティに仕上げた特別仕様を作ったりしていたので、走りにも期待できそうだがどうだろう。
トヨタの「i-ROAD」は、なんとカーブでバイクのように内側に車体を傾けて曲がる。デザインも未来的だ。前二輪、後ろ一輪の三輪EV、ぜひとも体験してみたい。
ユニークさでは、TDでもおなじみ根津孝太さんデザインの「rimOnO(リモノ)」がダントツ! なんとボディが布でできているぬいぐるみのようなクルマだ。
布製なのにはもちろん意図があって、子どもやお年寄りなど街を歩く人に優しいクルマにしたいため。個人的に、僕もこんなクルマが走り回る社会になったら素敵だなと思う。
こんな風にたくさんの「超小型モビリティ」が登場しているが、課題も多い。例えば、現在の法制度では一人乗りしかできないこと。二人乗れれば送迎に使えて便利だが、現在はシートが2つあっても、日本では一人乗りとなってしまう。何とも歯がゆいところだ。
ほかにも、幹線道路を一般車と一緒に走って大丈夫なの? という安全面、少量生産では軽自動車より割高になってしまう価格面など、考えるべきことはたくさんある。
国土交通省は「超小型モビリティ」という枠組みを作り、2013年から認定制度を設けて実証実験をしている。だがなかなか大きな進展が見えず、いつになったら小さなクルマが普通に買えるようになるのかは見えてこない。
実際どうなのか、試してみよう
そこでTDでは視点を変え、小さなクルマたちに実際に乗ってみながらこの問題について考えてみることにした。
乗り心地はいいの? 車道を走って怖くない? 安全なの? ほんとに実用的? 軽自動車との比較は? などなど、乗ってはじめて分かることもある。
もちろんデザインをテーマとするTDとしては「カッコいいの?」という点も気になるポイントだ。本連載では、今、日本で乗れる超小型モビリティを中心に取材していこうと思う。
第1回はつい先日東京にストアがオープンしたばかりの「Biro(ビロ)」を紹介する。既にヨーロッパの街を走り回っているおしゃれな小型EVは、東京で乗ってみるとどうだったのか。お楽しみに!