人口世界第2位の国、インドにおける最大のモーターショー
インドの人口は、世界銀行の統計によれば、2016年の時点で13.24億人だという。そしてこれをわずかに上回る中国ほどには急激な成長こそしていないが、2017年の新車販売台数は乗用車のみで約401万台に達している。これは中国、アメリカ、日本に次ぐ世界第4位の規模で、その市場ポテンシャルの高さは誰もが認めるところだ。
そして人々のクルマに対する興味も、他の新興国と同じか、それ以上。首都デリーの近郊で隔年開催されているデリー・オートエキスポは、プレスデーを除いて一般公開日はわずか6日という短い会期ながら、2018年の入場者数は約60万5千人という記録を残した。ちなみにこれは前回(2016年)よりも微増となる。
混沌と熱狂
それではまず、ショーはいったいどんな様子なのかを紹介していこう。実は名前こそ「デリー」となっているが、会場はデリー市内ではない。以前は市内にある「プラガティ・マイダン」という見本市会場で開催されていたのだが、手狭になったため2014年から郊外に移転。現在はデリーの南東にある衛星都市ノイダの、さらに郊外となる「グレーター・ノイダ」と呼ばれる新開発街区にある見本市会場「インド・エキスポマート」で開催されている。
デリーから会場へのアクセスは、メトロに乗って最寄駅まで40分ほど移動した後、ショー主催者が用意した無料シャトルバスでさらに40分ほど。
かつて幕張メッセで開催されていた東京モーターショーを思い出す面倒臭さだ。シャトルバスには、普段は市内を走っている低床路線バスが使われる。立ち客で満員となった状態で交差点のない高規格道路を疾走するため、なかなかスリリングだ。
実はデリー市内とグレーターノイダをメトロで結ぶ計画があり、実際に高架橋の建設も進められてはいる。しかし2018年に開業予定と言われていたにもかかわらず、実際のところいつ開通するのかは定かではない。なにしろインドでは、なにごとにも想定以上の時間がかかるのが当たり前。できれば次回、2020年のショーまでに開通してくれていると嬉しいのだが。
ちなみにインドの人は、バスで座れないことに大きな不満を抱くらしい。そのため座席が埋まった時点で乗り込むのを嫌がり、乗車待ちの行列はなかなか前に進まない。その点、立って通勤することに慣れている日本人は得だ。行列を横目に先頭へ行き、係員に「乗っていい?」と訊ねると「おお、早く乗れ乗れ!」。ほとんど待ち時間なしでシャトルバスに乗ることができた。ただし前述の通り、日本の路線バスではありえないスピードで疾走する恐怖に耐える必要がある。
会場は敷地が広いため、屋外を歩いているときは混雑を感じることはないものの、展示ホール内部は人口密度が非常に高い。メルセデス・ベンツなどの人気プレミアムブランドでは人が押し寄せ、ブース全体をロープで囲って入場制限するほどだ。ブース入場の待機列が屋外にまで伸びる様子は、まるでコミックマーケットで「壁サークル」の新刊を求める行列を思い起こさせる。
また全体的に、各メーカーのブース演出はいまひとつ洗練されていないという感が強い。ムードや雰囲気を出すことに意識を向けるあまり、強い色彩のLED照明を当てたり、逆に暗すぎてよく見えなかったりして車両やボディカラーを台無しにしているメーカーが多い印象だ。塗料メーカーの調査員などは、さぞ苦労していることだろう。