デリーオートエキスポ(インド)後編|世界のローカルモーターショー訪問記

Mar 22,2019report

#Delhi2018

Mar22,2019

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デリーオートエキスポ(インド) 後編|世界のローカルモーターショー訪問記

文:
古庄 速人

前回に続き、2018年のインド・デリーにおけるモーターショーを古庄速人氏のレポートでお伝えする。後編では「二輪車」にフォーカスした。インドは二輪車の2017年の国内販売台数が約2019万台という世界最大の市場。自動車メーカー各社が精力的な出展を行なった様子を見てみよう。

前回の記事:デリーオートエキスポ(インド)前編|世界のローカルモーターショー訪問記

世界最大の二輪車市場

二輪車が大衆のパーソナルモビリティとして親しまれるのは、多くの国に共通する。そしてインドも例外ではなく、2017年の国内販売台数が約2019万台という世界最大の市場となっている。単純に台数で比較すると、およそ401万台という四輪車市場の5倍以上。そのためモーターショーでも意外なほど大きな存在感を見せている。

市場の中心は排気量250cc以下の小型モデルで、ここに強みを持つ日系メーカーと現地メーカーが激しく争う、というのが長年変わらない構図。トップシェアを誇るヒーロー・モトコープを2位のホンダが激しく追い上げ、この2強をバジャジTVSといった現地勢、それにヤマハ、スズキの日本勢が追いかけている。

ちなみに1984年から2011年まではヒーローとホンダは提携関係にあり、合弁ブランドの「ヒーローホンダ」が圧倒的な首位として市場に君臨していた。経営戦略の違いから提携を解消して以降はライバル関係となり、現在は地元の利を生かしたヒーローが首位の座を保っている。しかし商品開発力に勝るホンダが猛追しているという状況だ。

また他の地元メーカーも、日本メーカーとの提携で成長し、現在はグローバルに事業を展開している。かつてカワサキと提携していたバジャジは現在、KTMの筆頭株主となっているほか、2017年にトライアンフと提携を結んだ。同じく2001年までスズキと提携して成長してきたTVSは、2013年にBMWと提携している。

メーカーを問わずスクーターのラインナップがどんどん充実しているのは、経済発展に伴う中間層の増加をはじめとした、さまざまな要因による影響ではないだろうか。全国的に就労機会の増加した女性が、自分で運転するパーソナルモビリティを求めるようになってきている。そして市街部では道路インフラの整備が進み、舗装率が上がってきたおかげでスクーターでも走りやすくなってきた。

さらに価値観が多様化も進み、旧来のモーターサイクルの「走り」とは別の部分、スタイリッシュさや実用性が注目を集めているのだろう。しかしスクーターが旧来のモーターサイクルに取って代わるという状況ではなく、あらゆるカテゴリーが伸張し、地元メーカーはさまざまな商機を見出しているようだ。

対照的な姿勢を見せたインド勢

さてそれでは、2018年のオートエキスポの様子を紹介していこう。先述の通り、市場の中心が250cc以下のモデルということもあって、ショーで公開された新型車も小型モデルばかり。ただしスクーターからロードスポーツ、オフローダー、クルーザーなど、実にバラエティ豊かな顔ぶれとなっているのが興味深い。インドではそれだけ多様な可能性に満ちている、ということなのだろう。

もっとも意欲的な展示をしていたのはTVS。コンセプト電動スクーターのCREON(クレオン)をワールドプレミアした。スポーティさとエコロジー性能の両立を目指したデザインで、フットボード中央にリチウムイオン電池を搭載。ただしフットボード下にフレームを通す従来のスクーターとは異なり、アルミチューブフレームの下に重量のかさむバッテリーを収容するという、モーターサイクルに近いレイアウトを採用している。

TVSの電動コンセプトスクーター、CREON。スポーティでデジタル感覚のスタイリングは若者たちに好評だった。

60分で80%の急速充電が可能で、インテルと共同開発した「未来的なスマートコネクテッド・テクノロジー」を搭載。メーター表示や走行モードを切り替えられるだけでなく、GPSとの連携によるナビや盗難防止などの機能を備えるという。クレオンは2019年中に発売する電動スクーターの予告ということだが、製品ではどこまでこうした先進的な要素が盛り込まれているのか楽しみだ。

このほかTVSは、クルーザータイプの新モデルを初公開した。ZEPPELIN(ツェッペリン)という名が与えられた220cc単気筒クルーザーは、スタイリングと機能の双方で近未来的デザインを持つ。エンジンこそ既存機種からの流用だが、ここにTVSが特許を取得したISG(インテグレーテッド・スタータージェネレーター)を組み合わせているのが注目点。これはスターターが回生充電し、加速時にトルクをアシストするというもの。自動車業界でちょっと話題になっている「48Vマイルドハイブリッド」とほぼ同じものと考えればよさそうだ。

つまりツェッペリンは、先進的なハイブリッド・クルーザーなのだ。TVSによれば「新世代の長距離ライダー」をターゲットに開発したとのことで、車体に「E-BOOST」と書かれたバッジが誇らしげに装着されている。日本企業のお株を奪うようなギミックを武器に携え、今年後半に発売となる見通しだ。

フォワードコントロールのライディングポジションはアメリカン・クルーザーそのものだが、スタイリングは近未来的なTVS ZEPPELIN。

いっぽう、トップシェアのヒーローはやや保守的な展示。ブースの中心に置かれたX PULSE 200(エックスパルス200)はグローバル戦略モデルだが、すでに各国のイベントで紹介済み。他に目新しいものは150ccスポーツモデルのXTREME(エクストリーム)シリーズに200ccの200Rを、110ccスクーターのMAESTRO EDGE(マエストロ・エッジ)に125ccモデルを追加した程度。将来のラインナップ展開を予感させるコンセプトモデルはなく、目先の需要への対応に注力し、ラインナップを充実させようとする様子がうかがえた。

ヒーロー初の本格アドベンチャーモデル、X PULSE 200。各国のモーターサイクルショーでおなじみの200ccモデルだ。
これまで150ccだったXTREMEに200ccモデルを追加。よりスポーティさを増した専用デザインのボディが与えられている。
基本デザインは実用モデルのMAESTRO 125。エッジの効いたディテールとマットカラーでスポーティさを演出している。
日系ブランドの攻勢

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