(前回の記事)ファースト・ワン・マイル・モビリティ 「FOMM ONE」に乗ってきた!
「ファースト・ワン・マイル」へのこだわり
鶴巻:ひとつには地球環境に貢献したいという思いがあります。小さいクルマなら使う素材も少なく、重量も軽くできるからバッテリーも小さくてすみます。単に走るときの燃費といった話だけではなく、ライフサイクル、つまりクルマの走行時だけでなく製造から廃棄までをトータルで見ても、車体が小さければ小さいほど環境への負荷が小さくなるわけです。
もうひとつ、私が小さいものを作るのが得意ということもありますね。
もともとスズキで二輪車の設計を担当し、その後もアラコで初代コムス、トヨタ車体で現行コムスの開発に携わってきました。EV開発のSIM-Driveを経て2013年に株式会社FOMMを設立しました。ですから小型の乗りものに関しては多くの経験があります。
必然的にFOMMでは小型EVを作るという発想になりました。
はい。長くコムスに携わってきましたから、自分の中で改善したいポイントがありました。
例えばFOMMで作るクルマは広く一般家庭に普及させたいと思っていますから、1人乗りでは厳しいものがあります。実際私もコムスを開発したとき「我が家でもコムスを買いたい」と妻に申し出たことがあるんですが、却下されました(笑)。
小さなクルマは、どうしても軽自動車と比較されてしまいます。
そのとき、ドアもない、クーラーもない、ということではなかなか手を出せないですよね。
バッテリーの問題もありました。コムスでは鉛電池を採用していますが、これだと(容量に対して重いため)航続距離が短くなってしまいます。コムスの走行距離は50km程度だと思いますが、短く感じる人もいるかもしれません。
だからFOMM ONEには、これまで自分でEVに乗って改善したいと思ったところをすべて入れました。その分、価格が高くなってしまいましたが。
もちろんです。ただ、旧型コムスがリアにインホイールモーターを搭載しているのに対し、FOMM ONEはフロントに搭載しているという違いがあります。これは、コムスでリアモーターでは電力の回生量が稼げないという経験をしたためです。
クルマはブレーキをかけるとフロントの荷重が増え、リヤの荷重が減ります。その荷重の少ないリヤタイヤで強く回生をしようとすると、タイヤがスリップしてしまうことがあります。
そこでコムスは回生量をコントロールしていました。FOMMでは少しでも回生量を増やすため、設計当初からフロントにモーターを入れると決めていました。