【試乗レポ】こがなくてもスイスイ進むハイブリッドバイクglafitバイクへの期待

Jun 07,2019report

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Jun07,2019

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【試乗レポ】こがなくてもスイスイ進むハイブリッドバイク glafitバイクへの期待

文:
TD編集部 出雲井 亨

見た目はよくある折りたたみ自転車。だがハンドルのグリップをぐいっと回すと、ペダルをこがなくてもスーッと音もなく進み出す。そんな自転車とバイクの中間のような乗りものが、和歌山発の「glafitバイク GFR-01(以下glafitバイク)」だ。クラウドファンディングの「Makuake」で1億円以上を集めた製品として話題になったので覚えている方も多いだろう。
自転車型の電動バイクは、普通の原付バイクとどこが違うのか。電動アシスト自転車より便利なのか。そんな疑問を解決すべく、実際に試乗してみることにした。今回は試乗を通じて感じたことを、そして次回はglafit代表取締役、鳴海 禎造氏のインタビューをお届けする。

見た目は完全に折りたたみ自転車

「では、さっそく乗ってみますか」。部屋の中に置いてあった折りたたみ自転車のような乗りものを、glafit株式会社CEOの鳴海禎造(なるみ・ていぞう)氏はひょいと持ち上げ、玄関の外に出した。
BIRO」、「FOMM ONE」、「コムス」などの超小型モビリティを取材してきた筆者が今回紹介するのはglafitバイク。通勤通学などの日常使いはもちろん、ドライブ先での「ラストワンマイル」の移動手段としての利便性から、自転車とバイクのハイブリッドであるglafitバイクが注目を集めていると聞きつけ、超小型モビリティ特集のスピンオフ企画として同社を訪れた。

同社東京オフィスは渋谷にあるマンションの一室。その廊下をglafitバイクを押しながら歩く。筆者、編集者、鳴海氏の3名は、glafitバイクとともにエレベーターに乗り込んだ。折りたたむ必要もない。原付バイクはもちろん、いわゆるママチャリでもこんな芸当はできないだろう。この軽さとコンパクトさがglafitバイクの特徴だ。

押して歩いているときは自転車と変わらないglafitバイクだが、交通ルールは自転車感覚というわけにはいかない。法律上は原付扱いとなるため、原付バイク(正確には原付一種、50cc以下のバイク)と同様のルールが適用されるのだ。

よく街で見かけるスクーターと同じで、第一種原動機付自転車を運転できる免許(クルマの免許でOK)が必要。ヘルメットもかぶらなくてはならない。走れる場所は車道だけ、曲がるときはウインカーを出す必要がある。もちろんナンバープレートがついている。

それでもglafitバイクの重量は約18kgと圧倒的に軽いから、70kgを超える原付バイクとは乗るときの気軽さがまったく違う。ちなみに一般的なママチャリは約20kg、電動アシスト自転車になると25kgを超えるものが多いから、自転車と比べてもglafitバイクの軽さは際立っている。

フレーム内に内蔵されているバッテリーは家庭用コンセントで充電でき、フル充電までは4-5時間ほど。1回の走行距離は乗る人の体重によって変わるが、例えば体重70kgの人が時速25kmで定地走行した場合で約38kmだという(※電動バイクは、走り方や使い方、使用環境等によって航続可能距離が大きく異なる)。もちろんバッテリーが切れそうになったらペダル走行も可能だ。

見た目と走りのギャップが楽しい

さっそくまたがって、走ってみることにする。ロックの開錠は指紋認証。シートの後ろにある鍵部分に指を押し当てると、カチャッと鍵が開く。未来感があってワクワクするしかけだ。ハンドルのスイッチで走行モードを選べば準備完了。
glafitバイクには3つのモードがある。モーターを使用せず人力で進む「ペダル走行モード」、電動アシスト自転車のような「ハイブリッドモード」、そしてまったくペダルをこがずに走れる「電動バイクモード」だ。今回は主に一番の特徴でもある電動バイクモードで試乗した。

glafitバイクにまたがり走り出した途端、妙な感覚に襲われる。乗り心地は自転車そのもので、サスペンションがないので道路の凹凸がシートに直接伝わってくる。ハンドルの軽さも自転車そのもので、原付バイクとは明らかに違う。それなのに、ぐいっとグリップをひねると、まるで背中を押されたかのようにパワフルに進み出す。そのギャップに思わず笑ってしまった。

ライダーの体格にもよるが、最高時速は30km/hに届くかどうか、というところだろう。あくまで乗った感じは自転車だから、時速20kmちょっとでもスピード感があり、それ以上スピードを出したくなることはない。制限速度内で走っている分にはフレームのガタつきもなく(フレーム内にバッテリーが入っているためかもしれない)、前後ディスクブレーキということで制動力も十分あり、安心して走ることができた。

登り坂にさしかかると、みるみるスピードが落ちる。そんなときはペダルの出番だ。一般的な電動アシスト自転車は、人間がこぐ力をモーターがアシストしてくれるが、glafitバイクの場合は、頑張っているモーターを人間がアシストする感覚。電動アシスト自転車と違ってペダルが重くならないので、あまり負担には感じない。「遅いな」という不満より「がんばれ」と応援する気持ちのほうが強く、妙な愛着を覚えた。
渋谷の真ん中を、街行く人の注目を浴びながら走る。原付一種だから、交差点によってはクルマと一緒に右折レーンに並ぶ必要がある。折りたたみ自転車にしか見えない乗りものが交差点の真ん中で右折待ちしている様子は、知らない人から見たら奇妙に映ったかもしれない。なお3車線以上の交差点では、原則として二段階右折が必要になる。

今回試乗したコースの最後には、50メートルくらい一方通行を逆行する区間があった。当然乗ったまま進入するわけにはいかないので、降りて電源を切る。この状態で押して歩けば歩行者と同じ扱いだから、一方通行でも問題なく通れる。もちろん押し歩きはラクラクだ。原付にはない、この軽やかさがglafitバイクの魅力だ。

自転車の駐輪場を使えるのも大きなメリットだ。glafitバイクを駐められるか規約の確認は必要だが、サイズ的には大抵の駐輪場に収まるはず。都内はバイクの駐車場がない場所が多く、せっかく目的地にたどり着いたのに駐める場所を探すのに30分以上かかった、なんてことも少なくない。だが自転車の駐輪場なら多くの施設に併設されているし、有料の駐輪場もよく見かける。glafitバイクなら安心して普段の移動に使えるだろう。

なお、今回は試す機会がなかったが、glafitバイクで国道のような大きな幹線道路を走るのは怖いだろう。クルマから見たら単なる自転車だから「道路の端をひっそりと走る」ことが求められる。そして、どんなに交通量が多い道路でも自転車のように歩道に逃げるわけにはいかないのだ。大きな道路を使う中長距離の移動にはあまり向いていない。

ペダル走行時は「自転車扱い」になったら最高!

試乗してみると、glafitバイクはかなり楽しい乗りものだった。交通量の少ない道を走る限り、スピードの遅さは気にならず、登り坂でスピードが落ちるのもご愛嬌。自転車の行動範囲よりももう少しだけ遠出したい、そんなときにピッタリの乗りものだ。イメージとしては都内の電車で数駅分、時間にして30分程度の移動だろうか。いざとなったら輪行袋に入れて電車に乗ったり、タクシーに乗せて帰ることもできる。
自転車以上の機動力と、原付バイク以上の利便性を兼ね備えた、都市の移動手段としてかなり理想に近い存在と感じた。ただひとつの課題を除いては。

glafitバイクに感じた課題、それは「原付一種扱い」という法律上の立場だ。これはglafitバイク自身のせいではないのだが、この制限によって使い方に不自由を強いられるケースがある。電動バイクモードのときに原付と見なされるのは当然だが、ペダルをこいで走っていても同様なのだ。だから、例えペダル走行モードで走っていても、バッテリー切れでヘッドライトやウインカーがつかなくなると(少なくとも法律上は)取り締まりの対象になってしまう。

普通の自転車ならすいっと入れる一方通行の出口も(大抵の一方通行には「自転車を除く」と書かれている)、原付扱いだから逆走はできない。これは住む場所の道路環境によっては不便なケースもあるだろう。
筆者の家がまさにそうで、家の前の道路が長い一方通行になっている。だから駅の方向に行きたくても一度正反対の方向に進み、急坂を下ってから改めて別の坂を登る必要がある。電動アシスト自転車ならさっと5分で駅まで行けるのに、glafitバイクだと倍近くかかるだろう。そう考えると購入時の選択肢に入れづらい。

「自転車モードのときは自転車と同等の扱いとする」というだけで、この状況は大きく変わるはずだ。ペダル走行モードのときのglafitバイクのスピードは一般的な自転車と大差ない。むしろ重量の面でもブレーキ性能の面でも、前後に子どもを乗せたママチャリより危険は少ないと思う。

実はglafitは、この規制の見直しを目指すべく動いている。内閣府の「規制のサンドボックス制度」に地元の和歌山市と共同で申請。ペダル走行モードだけを使える状態にしたglafitバイクを公用自転車やレンタサイクルとして提供し、自転車と比べて安全面で劣っていないことを検証するという。これで安全性が立証されれば、ペダル走行時は自転車、電動走行時はバイクという理想的な乗りものが実現するかもしれない。実験は2019年6月にも始まる予定だというから、期待したいところだ。

次回はglafitのCEO、鳴海氏へのインタビューをお届けする。

インタビュー編は6月21日(金)公開予定です。

 

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