【連載】イマドキの美大生と喋ってきたvol.3 素直さを武器に挑戦し続ける日々

Dec 08,2017report

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Dec08,2017

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【連載】イマドキの美大生と喋ってきた vol.3 素直さを武器に挑戦し続ける日々

文:
TD編集部

今、デザインやアートを学ぶ若者たちはどんなことを考え、何を求めているのか? 彼らの目に映る、学校生活、暮らし、考え・悩みなど、様々な「リアル」を聞いていきます。
第3回目の今回は、京都造形芸術大学(通称「京造」)の瓜生山(うりゅうざん)キャンパスで、空間デザイン学科に通う吉岡華子さん(ファッションデザインコース)とお話ししてきました。吉岡さんは高校卒業後、地元の広島から京都に移り、今年の春に入学した大学1年生です。

入学のきっかけは、1冊のパンフレット。

イマドキの美大生に話を聞こうというTDの企画。まずは、大学でどんなことをやっているか教えてください!

吉岡:私は、空間デザインやファッションを勉強する学科にいるのですが、今は学科のことよりもパンフレットを作るプロジェクトに熱中してしまっています。

へえ! めずらしいね。どんなパンフレットを作っているの?

大学案内のパンフレットです。資料請求すると必ずついてきます。うちの大学のパフレットって、他大学と違ってサイズや中身のコンテンツが特徴的なんです。ページ数は340ページで、内容も盛り沢山です。

京都造形の中にあるお洒落なカフェラウンジでインタビュー。食事以外にもミーティングで使用する学生が多く賑やかなスペースでした。
吉岡さんが持ってきてくれた過去のパンフレット。サイズは文庫本ほどで、とても分厚い!
本当だ。パンフレットじゃなくて本みたいだね。中身も一般的なのと違って、写真やイラストもかなりこだわっている。これ、本当に学生が作っているの!?

はい。私もずっとプロのデザイナーが作っているものだと思っていたので、入学して知った時はすごく驚きました。私がこの大学に入ったきっかけの1つは、このパンフレットだったので。
ちなみに今年のメンバーは1回生6人と2回生3人、計9人です。あと先生が1人、監修・指導としてついてくれています。

あ、そうか。こっちでは1年生ではなく1回生、というんだよね。9人で制作してるなんてすごいね。しかも下級生がメインなんだ。

はい。実は3・4回生はいないんです。昔から1・2回生が主体でやるものらしく、過去には全員1回生だった年もあったみたいです。私もこのプロジェクトに参加するまで学生が作っているなんて思ってもいなかったし、しかも1・2回生で作っているなんて正直驚きました(笑)。

そうだよね。吉岡さんは今までAdobe IllustratorとかPhotoshopなどのソフトを使ったことはあったの?

それが全くなく、編集やデザインについても無知でした。「こんな素敵なパンフレット、自分も作れたらいいな~」くらいの感覚でプロジェクトに参加したんですけど、実際、がっつりと本を一冊みんなで作るぞっていう雰囲気で、入った当初は、あれ? と戸惑いました(笑)。
他の1回生も私と同じようにソフトの使い方やパンフレットの作り方が分からなかったので、一緒に先輩のところへ行って聞いたり調べたりして、作りながら覚えたって感じです。

入試よりも緊張した、プロジェクトの参加試験。

まさに「習うより慣れよ」。大変だけど一番力がつく方法かも。そういえば、吉岡さんがこのプロジェクトに参加しようと思ったきっかけはなんだったの? 誰かに誘われたの?

いえ、偶然にも同じ学科の友人がこのプロジェクトのメンバー募集チラシを発見して、私に教えてくれたんです。その友人とパンフレットについて話したことがあって、私が興味持っていることを覚えていてくれたみたいで。
それで応募して、なんとか選考試験もパスできて、メンバーとしてプロジェクトに関われています。

このプロジェクトって、参加するのに試験があるの!?

実はそうなんです。最初に書類審査のようなものがあって、それに通ったら課題が出されて、最後に課題のプレゼンと面接をして合否がでるんです。

思っていたよりもハードルが高い……。どんな課題だった?

今までのパンフレットを参考にして、自分でコンテンツを企画してプレゼンするという課題でした。監修・指導してくださっている先生とプロジェクトに関わった先輩たちの前でプレゼンしたのですが、落ちる人もいると聞いていたのですごく緊張しました……。正直、大学の入試よりも緊張しました(笑)。

そんな課題があるんだ。吉岡さんは、どんなものを作ってプレゼンしたの?

私は美術の経験が少ないので普通に作っても完成度の高いものは作れないと思い、内容にこだわろうと考えました。それで、カフェや学内にいる色んな学科の学生30名くらいに「1年後の自分は何をしていると思いますか?」と聞き歩き、紙に書いて紙飛行機にして飛ばしているところを撮影させてもらったんです。それらを素材にして『To myself』というタイトルのパンフレットのようなものを作りました。もちろん入学してすぐの頃はIllustratorなどが使えないので、画用紙や写真を切り貼りして作りました。

すごい、撮影までして作ったんだ……。吉岡さんの「作りたい」っていう熱い気持ちが、プレゼンの時にストレートに伝わったんだろうな。やっぱりそういう意思がないと、この試験は厳しそうだね。

そうですね。プロジェクト自体がかなりハードなので、最初のハードルを高くしているのかもしれないです。入ってみて改めて思いますが、相当な気持ちがないと続けられない気がします。

やっぱり、かなりハードなんだ。

ハードですよ〜(笑)。なぜか毎年作る手順が異なっているようで、今年は本来1年かけて作るものを2ヶ月間でざっくりと作って、それに修正をかけていく手順なんです。
今は、その「2ヶ月パンフ」制作期間が終わったので少しスケジュールが落ち着いたのですが、ついこの前までは、毎日メンバーとミーティングして、夜遅くまでずっと制作するという日々でした。家に帰って夕飯を作る時間もバイトする時間もないくらい、めちゃくちゃ忙しかったです……。

夏休みもこのプロジェクトの合宿があったので、正直あまり休めなかったですね。夏休み初日から合宿日までヒーヒー言いながら「2ヶ月パンフ」のプレゼン準備をしていました。

パンフレット制作のミーティング風景。天気がいい日はテラスのようなスペースで行うようです。気持ち良さそう。彼女たちが作る来年のパンフレット、楽しみだな。
1年生なのにバイトもできないくらい忙しいんだ。美大生って課題も忙しいし、お金も結構かかりそうだけど、大丈夫だった?

お金に関しては、親から学費や家賃を援助してもらっているので大丈夫です。あと、仕送りをしてもらっているので、有り難いことに生活には困っていないです。今は少し落ち着いてきたので、もう少ししたらバイトしたいと思っています。

そこまでやっているなら、大学から単位が出てもいいのにね(笑)。

そうですね(笑)。傍から見たらボランティアですよね。ただ、それよりももっと大きなものを得ているなと感じます。パンフレットを実際に作ってみて、今までの私だったら気づかない部分に気づけるようになってきたり、Illustratorなどのソフトを使うスキルが身についたり。撮影も基本的に自分たちで行うので、日々実践しながら学んでいる感じです。

素直に、前向きに頑張っていて、ここまでやりがいを感じていて偉いね。吉岡さんたちが作っている来年のパンフレットはどんな感じなの?

パンフレットには毎年テーマがあります。前作のテーマは「マスキングテープ」で、今回は「白靴下」です。テーマは先生が決めて、それを元に学生の私たちが面白いコンテンツを作っています。
結構、限定的で難しいテーマですけど、広げて企画につなげていくのが楽しいです。
今は入稿に向けて制作中ですが、予定通りに進めば年明けに入稿して5月くらいには私たちが作ったパンフレットが配布され始めると思います。

今年配布されている、前作のパンフレット。テーマは「マスキングテープ」。フルカラーでおしゃれなページ構成!
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