ゴールデンクレイ賞は「困難な形状をまとめた」プリウスへ
青戸:このプリウスは、強い意志を持ってデザインを手がけられたということがよく分かりますね。一方で、特に国内のユーザーからは好き嫌いがはっきり分かれるデザインではないでしょうか。
私は年末ロサンゼルスに行ってフリーウェイで走っているプリウスを見ましたが、50メートルぐらい離れて見るのと3メートルくらいの距離から見るのでは全然印象が違うんですね。離れて見ると、「プリウスがやりたかったデザイン」だということが非常によく分かりました。
そのデザインの意図――つまり、大変困難な形状をよくまとめているということで、カーデザイン大賞2016-2017のゴールデンクレイ賞は、プリウスに贈ることになりました。
児玉:ありがとうございます。困難という意味で言うと、この4代目のプリウスを開発する時にどの方向を狙うのか、コンセプトを定めるのが、正直、非常に難しかったです。何度もモデルを作り、最終段階のステージまで持っていったんですが、4代目プリウスとしては期待値に及ばずっていう結論になってしまったんです。
そこからもう一度踏ん張って「やり直そう」ということで、目に入る特徴はすべて変えて作り上げました。
青戸:そんな経緯があったんですね。
児玉:ですが、青戸さんがおっしゃった通り、ロングスパンで見たときに伝わる意図――例えばキャビンの動きとか、大きなボディのシルエットなどは崩さずに進めました。
エンブレムからリヤまで伸びる特徴的なキャラクターラインが躍動感を感じさせる
通常やらない意匠処理に挑戦した今回のプリウス
青戸:新しいプリウスのシルエットの特徴はどんな部分にあるんでしょうか。
児玉:ご存じのように、3代目はルーフのピーク(屋根の一番高い部分)が後ろにあって、その分後席のヘッドクリアランス(頭上の空間)をかせいでます。ですが、4代目は新しいプラットホームになったので、新しいアプローチが可能になりました。シートの位置をちょっと下げることによって、先代と同じヘッドクリアランスを保ちつつ、ピークの位置を前出しして、さらに空力を良くできるようになったんです。さらに、リヤウインドウ周囲も空力性能を高めるために、幅を徐々に絞っていく形状を意図的に作っています。
全席のゆとりある頭上空間を確保。次世代環境車に相応しい空力最適フォルムを実現させた。
青戸:面と面の間を灯火器類などでつないでいる、そこに新しさを感じました。
児玉:そうですね。再提案した後の、最初にお客さまに伝わるフロントやリヤのグラフィックはかなりデザイン的に挑戦したつもりです。通常ではやらないような意匠処理をしています。例えば、通常パーツ類をデザインするときは、まずクレイでボディの形を作っておいて、そこにテーピングをして部品グラフィックを決めていきます。
でも、今回のプリウスでは部品一つ一つが独立しているような感覚で作っているんです。通常の立体に単なる見切りを置いた部品ではなくて、まさしくおっしゃるとおり、部品自身が面と面との間で存在感を持つような造形をしました。
立体に機能性がシャープに融合した機能美をアイコニックに表現。
三角形状の輪郭を活かしたクリアランスランプも今までにないシャープな印象の光を演出。
その流れに沿うように、他のランプ機能を効率よく配置。
夜間においても特徴的な背面シルエットをテールランプで表現。