スペキュラティブデザインが示す未来の生活家電
冷蔵庫や洗濯機などの生活家電は、この数十年間その機能やデザインが大きく変化していない。商品間の性能・品質などの差異が失われた「コモディティ化」と呼ばれる状況であり、より良い生活家電をつくるために全く新しい方法論が必要とされている。
そこで注目されているのがスペキュラティブデザインだ。スペキュラティブ(speculative)とは「(未来について)推測する/思索する」などを意味する言葉。「こんな未来もありえるのではないか?」という問いを提示し、これからの社会がどうあるべきかを考えさせる物語性の強いデザイン。それはこれまでの「問題解決型のデザイン」でなく「問題提起型のデザイン」であるといえるだろう。
未来からの視点で現代に問いを投げかけるスペキュラティブデザインは、大きくアップデートされなくなって久しい生活家電の新たなビジョンを提示することはできるだろうか。
企業と大学のコラボレーション
ハイアールアジアR&D株式会社は、1984年に中国で創業された家電メーカーの日本拠点。日本発のオリジナルブランド「AQUA」や、世界展開するグローバルブランド 「Haier」などの商品開発で知られている。そんなハイアールアジアR&Dと武蔵野美術大学工芸工業デザイン学科(以下、ムサビ)が産学共同プロジェクトを実施し、その成果発表展「スぺキュラティブデザインによる新時代の創造──未来の冷蔵庫、洗濯機」がGOOD DESIGN Marunouchiで開催された。
プロジェクトの始まりは2021年11月にさかのぼる。5~10年後のライフスタイルを考え、近未来の冷蔵庫や洗濯機が「こうあってもいいのではないか?」と仮説を立てることを目指した本プロジェクトは、まさにスペキュラティブデザインの方法論を教育現場に実装したものだった。
ここからは、オープニング・イベントでムサビの学生たちが提案・発表したプランを見ていきながら、展覧会の内容を振り返る。